財務トピックス(コンサルタントコラム)

「あの粉飾決算」から見える資金繰りの重要性

粉飾決算。人類史上最高峰の発明とも言われる「複式簿記」の抜け穴を巧みに使い、実際とはかけ離れた決算書を作成、多くは財務をよく見せることで投資家や金融機関の目を欺き、違法に資金調達をする行為のなかで登場します。手口は「これ絶対に粉飾決算じゃないか。見れば分かるよ」という《下手なお化粧》レベルのものから「これは分からん!」という《整形外科手術》レベルのものまで多岐に渡り、筆者も過去金融機関でお世話になっていた時代に何度か粉飾決算を見たことがあります。

ところで世間を騒がせた「あの粉飾決算事件」に、ようやく法による裁きが確定したとのニュースが流れておりました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33194590Q8A720C1CC0000/

(2018年7月20日 日本経済新聞電子版より引用)

 

経営破綻で今はなき「てるみくらぶ」の元社長に、粉飾決算による銀行への虚偽報告、ならびにその決算を使って違法な資金調達を行ったとして、懲役6年の有罪が言い渡されたとのことです。

てるみくらぶは監査が必要な上場企業ではなく、非上場の格安旅行チケット販売会社でした。一方で年商規模は100億円クラスであり、返済できず焦げ付いた融資総額も相当額にのぼったため、悪質な粉飾事件として世間を騒がせました。さて、ここで感じるのが

「待てよ。そんな粉飾まで行うような会社が、何で2年も3年も生きて銀行を欺けたのか?」

「あれだけ決算書を重視しているはずの銀行が、なぜ数年にもわたって粉飾を見抜けなかったのか?」

ということです。とてつもなく巧妙なやり口を使ったのか、または銀行が決算書をよく読んでいなかったのか。筆者はその原因にこそ、企業の皆様の学びが隠れているような気がします。今回はここに焦点を当てましょう。

 

〇穴あきバケツに水を入れ続けた「てるみ」

てるみくらぶは、もともと航空会社の販売網で売り切れなかったチケットを格安で仕入れ、自社販売網で通常よりも安く(一方で、仕入れ価格よりも高く)再販することで「顧客からの入金+航空会社からの販売インセンティブの入金」を獲得するビジネスモデルを構築していた会社でした。しかしネットの普及に伴い航空会社の販売網が強化され、チケット販売が極めて楽に行えるようになったことで、同社は格安のチケット仕入れルートを失い、もはや顧客に安く販売できない状態に陥っていたといいます。

それでも販売の手を止めた時点で顧客からの入金もインセンティブもなくなり、各種の支払いはできなくなる…そこで同社は、仕入れ価格以下の代金で激安チケットを大量にさばくことで何とか入金を確保し、地獄の「ジリ貧自転車操業」レースへと駆け出します。

結果、同社は次第に赤字取引の件数は増えていく一方、激安チケットを求める顧客からお金を集め、それを支払いのために右から左へ横流し…というサイクルに陥り、ますます足を止められず、ついに入金が支払いを下回って突然死を迎えました。

お分かりかと思いますが、てるみくらぶは穴あきバケツのように、日々の入金(水)はたたき売りで何とか確保するものの、あっという間に支払い(穴)で消えていく構造となり、逆に言えば蛇口(カネ)が詰まるまでは永遠に「死ねずにどんどん悪くなる会社」となりました。どんなに財務が悪くても、どんなにB/S、P/Lの数値がお粗末になろうとも、カネさえあれば、企業は死なない。その典型的な事例と言えるでしょう。

 

〇1にも2にも資金繰り!

カネさえあれば、企業は死なない

「当たり前でしょ。だから銀行からお金も借りるんじゃないか」とお感じの方も多いかと思いますが、これほど企業経営において、教訓として掲げるべき言葉はないと感じます。あらゆる粉飾に手を染めたボロボロの会社ですら、激安チケットによる入金を使って数年もの間生き続けたのです。健全な企業を目指すならば、

・良質なキャッシュ(営業活動によって獲得できる「儲け」のお金、前向きな銀行借入)を

・タイミングよく(きちんとお金が溜まっており、先の見通しが立つ状態で)

・適切な額だけ

使用することがいかに大切か、ご理解いただけると思います。そしてこうした点を実現するのが、まさに弊社金融財務支援部でも何度もお伝えしている「資金繰り(キャッシュ)の最大化、管理」です。

金融業界でよく言われる話として、お金には色があり、色を付けて事業や部門ごとにきちんとお金を管理・利用している経営者こそが企業を成長させる(=財務を健全化させる)というものがあります。例えば資金繰りをノウハウに基づいて管理すれば、そのお金は「本業の儲けから生まれるのか、借入で生まれるのか、投資で生まれるのか」も明確に把握することができるようになります。

銀行にも資金繰りに関する知識は備わっているものの、彼らは企業の財布の中身までつまびらかに把握することが難しく、手元の決算書から読み取れる情報に依存してしかキャッシュの分析を行うことができません。前述の事件においても、決算書自体が思い切り粉飾されていたのですから、資金繰りにまで踏み込んで資料を回収していないと、どうしても粉飾と断定できない側面があったのかもしれません。

1にも2にも資金繰り、資金繰りは企業を活かす、です。

 

〇まとめ:資金繰りと財務

今回は、世間を騒がせた事件を見ながら、結局企業はカネが1番大事、資金繰りが根本だというお話をしました。個人的には事件の裏側で、いったい金融機関と企業の間にどんなドラマがあったのかを知りたいなと思う一方、金融財務支援を行う者として改めて資金繰りの大切さを知る良いニュースとなりました。なお、資金繰りは当然ながら収支(=入金-出金)を見るためのもので、この「収支」は損益計算書の「収益」と密な相関性があります。資金繰りをマスターすることで、ひいては損益計算書の収益面も精緻に予測できるようになり、企業の財務体質をより強固なものに作り替えることも可能になります。

「でも、正直忙しくてなかなか手がつかない領域。何か、効率よく学べる場所はないか」

という方は、ぜひ弊社までご相談いただければ幸いです。

【この記事を書いたコンサルタント】
片山 孝章

メガバンクの法人営業担当として3年勤務したのち、船井総合研究所に中途入社。 3年の勤務ながら地方拠点・都市拠点の両方を経験し、
スタートアップ企業に対する創業支援融資から、中堅~大企業向けの各種金融業務を学ぶ。 現在は若手担当者ならではの素早く、小回りの利いた対応を心がけることで、 経営者の表面的ニーズのみならず、想いにも寄り添える提案を心がけている。

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